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管理人の日常・小話・プチ連載など、気の向くままに更新中
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「…扇?」

真夜中に目を覚ました染は、天井裏に何者かの気配を感じた。

不審に思いながら自分の忍かと声をかけたが、誰も返事を寄越さない。

しかもそこに居た筈の気配は、もう既に消えていた。

「…」


染は急いで起き上がり髪を結い上げると、刀を持って部屋を出る。

何処かから暗殺を命じられた忍か、それとも間者か侵入していたのか。

どちらにせよ自分の愛する者たちに危害を加える存在には違いない。

いつもの柔らかい表情とは一変し冷たい顔をした染は、暗い廊下を静かに進んだ。




(…居た)

城の中で隠れやすい場所を一通り探した染は、最終的に屋根まで上がってきた。

するとそこには、鴉を思わせる真っ黒な人影が。


染は息を殺して、切っ先を人影に向ける。

そしてそのまま、それに向けて刀を投げつけた。

「!」

「逃がしませんよ」

二刀流である染は強く屋根を踏み投げた刀の前まで間合いを詰め、もう一本の刀で斬りかかった。


「ちょっ、姫様!?」

「!」

ぎりぎりのところで相手の声を確認した染は、急いで刀の向きを変えて鞘に戻す。

しかし身体の勢いは止められず、意思のない力はその人物にぶつかるまで止まらなかった。


どさっ!

「いででで!」

「ごっ、ごめんなさい!」

先ほどまでとは打って変わって、殺気を纏わない染は馬乗りになったその人物に謝る。

「大丈夫ですか?佐助…」

「ははっ。俺様ってば丈夫だから…いつつっ!」

眼下に見える馴染みの男は、痛みに顔を歪める。

それは幸村の命で織田の動向を探っていた佐助だった。

幸村に仕える彼を染が知らぬ筈もなく、城に居る間は染の鍛錬の相手をしたり、一緒に幸村をからかったりする仲だった。

そんな彼に刀を向けてしまった自分を叱責した染は、彼の腕に違和感を感じる。

無意識に握ってしまった腕に、先ほど彼は痛みを訴えていた。

「…佐助、腕を」

彼の上から退いて星空の下、屋根の上に正座すると佐助は苦笑いをする。

「姫様、大丈夫ですよ。ほら、俺様「いいから、見せて下さい」

「…はい」

真剣な顔で言葉を強めて言うと、観念したらしい佐助は腕を出した。

「…珍しいですね、貴方がこんな怪我をしてくるなんて」

腕に一筋の赤。

痛々しい傷跡は流石に応急処置が施されていたが十分とは言えず、染は眉をひそめる。


「下に降りましょう。早く処置しなければ悪くなります」

「そんな、姫様の手を煩わせるような怪我じゃありませんって!

自分でなんとかしますから、もうお休みになって下さいよ」

「私ごときに押し倒されるような身体で何を言うのですか。

気配を消しきることも出来てないのでしょう」

きっと、天井の違和感は佐助が幸村の部屋まで報告に行く近道として、染の天井裏を通ったのだろう。

しかし、何時もなら彼女を起こさず気配を消して行くという造作もないことすら、今は出来ていないようだった。


「なーんか俺様、自信なくしちゃう…」

「まあ、なんてことを。

貴方には自信も元気もあって頂かなければ困ります。

武田にも真田にも、捨て駒など存在し得ぬのですから」

「…やっぱ姫様、ますます大将に似てきたね」

「ふふ。良い意味と受け取りますよ。さぁ、手当てを」


有無を言わさぬ気配を纏った彼女に、やはり似ていなくとも虎の娘なのだと、佐助は密かに笑った。





全く良いオチも何もなかったのでボツになり携帯に眠っていた幻の4話目(笑)

確かこれは、佐助を出すってだけ決めてて、ついでに二刀流って話も出そうかなーって考えてたら、事務的な内容になってつまんないなぁってなったんだと思います。

手直しせず、あえてそのままでのせました(^_^;)
ああ、上手になりたいなぁ…


こんなのを読んで下さってありがとうございました(*^^*)


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